第1回目の投稿では工務店での地盤調査についてお話ししようと思います。
地盤調査の流れ
実際業務での地盤調査の流れは、
- 建築予定の建物形状が決まり、敷地上の配置計画が決まっている。
- 現地に地縄を張る(白いビニールロープ等で配置を再現する)
- 地盤改良業者に地盤調査を依頼する。
- 地盤改良業者の従業員もしくはその外注業者が現地にて地盤調査を行う。
- 調査データをもとに作成された地盤改良報告書が2、3日で送られてくる。
- 地盤改良業者の考察も尊重しながら、最終保証会社が改良工事のあり、なしを判定する。
となります。
ここで工務店でありがちなのが、設計者の判断が抜け落ちているということです。
本来は地盤の性能を確認した上で基礎設計をするので、地盤改良の有無は設計者の判断となります。
しかし実際は、地盤改良業者の判断や保証会社の判断に任せきりになってしまっているのが実情です。
着工前の段階で、また新築工事の予算との兼ね合いもあり、営業マンがとりまとめているケースが
多いですが、地盤に対する知識なんて皆無で、
「こちらが地盤報告書なので見ておいて下さい。
ちなみに改良工事の費用が○○円なのでよろしくお願いします。」
で進んでしまうことがほとんどです。
そもそも軟弱と予想される環境
お施主さん側でも気を付けるべきポイントは以下で、建築予定地を決める際には参考にしてみて下さい。
- 建築予定地は最近までは宅地ではなかった
- 宅地造成される以前は水田として利用されていた
- 建築予定地は盛土である
- 過去に浸水の履歴がある
- 建築予定地が下り坂の先にある
- 至近距離に池のある公園、調整池、水田がある
などなど他にもチェックポイントはいろいろありますが、私が日ごろの業務で依頼している
改良工事業者さんのお話しでは、地盤事故が一番多いのが人口地盤、つまり新しい宅地造成地です。
何百年前からあった地盤と比較すると、人が作った数年の地盤ではまだまだ締め固まっておらず
降雨や地震等で沈下する可能性が十分にあります。
スウェーデン式サウンディング試験
戸建住宅の地盤調査で主に使われるのはスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)です。
その名前の通り北欧の国の名前から由来しております。
スウェーデンでは大陸氷河が地表を削り取った跡にできる窪みが湿地化し、至る所に軟弱層が分布しています。そのため国有鉄道を敷設するための地盤調査を全土で実施する必要から開発されました。山間部なのど悪条件でも測定できるように、持ち運びでき、動力を必要とせず(人力)、比較的簡便な手順で調査できるのが特徴です。1976年にJIS規格化され、大手ハウスメーカーが採用することによって広く普及しました。
この試験は実際に土をサンプリングするわけではなく、棒状のロッドから伝わってくる感覚
「ガリガリ、ジャリジャリ」といった音や、「スルスル、ストン」といったロッドが入っていく感覚をデータに落とし込むので調査員の技量に、かなり影響されます。ロッドが地盤に一定深さ貫入するのに必要な回転数を、ボーリング試験で得られるN値に換算し(いわゆる換算N値)地盤の強度を求めます。
スウェーデン式サウンディング試験の細かな説明はここでは割愛させていただきます。
地盤調査報告書のチェック項目
地盤調査報告書のチェックポイントとして以下の点が挙げられます。
- 測定データにばらつきがある(地盤のバランスが悪い)
- 測点によって測定深度が大きく異なる(地盤が傾斜している)
- 基礎直下2mの深度までに100kgの試験荷重で自沈する層(換算N値0の自沈層)が連続してある
- 基礎下2m~5mの間に50kgの試験荷重で自沈する層が連続してある
- 表面近くの記録に「ガリガリ」と記載されている(がれき混じりの盛土で造成されており、その下の層が調査されていない可能性がある)
- 地下水位がGL-1m以内と記載されている。
まとめ
工務店では地盤調査の結果やその考察については、地盤改良業者頼みになってしまっているケースが多いので、施主の立場としてつっこんだ質問をぶつけて見ても良いかと思います。
その工務店がしっかりと調査データを把握し、基礎の計画をしているか分かるはずです。
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